
毎朝、シナモン、シュガー、バターの香りがヘルシンキの街に漂います。よだれが出そうな香りは、コルヴァプースティとして知られるシナモンロールの地元版です。フィンランド人が家で食べる普通の朝食は甘いものではないのですが、カフェに行くときはたいていいつもシナモンロールとコーヒーです。
最高のコルヴァプースティ作りをマスターするには一生かかるほどの熟練が必要です。まずは、シナモンロールの表面をよく見てみましょう。濃いエスプレッソ色から明るいラテの色まで、たくさんの茶色の濃淡が必要です。表面に濃淡がないものは、業務用に大量生産されたものかもしれません。シナモンロールは、ホームメードのような味と見かけが大切です。
完璧なコルヴァプースティには、精製糖ではなく大粒のパールシュガーがまぶしてあります。中に入っている美しいシナモンが見えるように、パンの層も簡単に開くようになっているのが理想的です。
そしてシナモンがたっぷり入っていなければなりません!
完璧なコルヴァプースティには、精製糖ではなく大粒のパールシュガーがまぶしてあります。中に入っている美しいシナモンが見えるように、パンの層も簡単に開くようになっているのが理想的です
中に入っている砂糖とバターの量が見えないので、シナモンロールが実はヘルシーな食べ物ではないという事実に直面しなくてすみます。そんなことは気にするべきではないのです!実際、フィンランド人がコルヴァプースティのカロリーについて話しているのを聞いたことはありません!そんなことをしたら冒涜です!
他の典型的な菓子パンとは違って、シナモンロールは1年中毎日食べられています。年の初めには、2月5日にルーネベリタルト(Runebergin torttu)という名前のアーモンドと蒸留酒のアラックかラムで風味をつけた小さなスイーツを食べます。ルーネベリタルトという名前は、フィンランドを代表する詩人ユーハン・ルードヴィーグ・ルーネベリにちなんでつけられました。彼は、妻のフレドリカが作ったタルトをポンチにつけて食べるのが好きだったと言われています。
2月か3月の懺悔の火曜日の頃になると、ラスキアイスプッラというスイーツをあちこちで見かけます。丸いパンを半分に切って、間に濃厚なクリームとジャムあるいはマジパンを挟んだものです。フィンランド人は、このパンに何を挟むのが好きかと言うことを議論したがります。告解の火曜日は1年に1日だけですが、ラスキアイスプッラは、2~3月の間ならずっと食べられて、がまんできないおいしさです
4月の最後の日と5月1日は、伝統ある「ヴァップ(Vappu)」の祝日で、フィンランドではシュガードーナッツと揚げたひも状のお菓子、ティッパレイパを食べます。ティッパレイパはスペインのチュロスに似た感じかもしれませんが、フィンランドではチョコレートを付けて食べることはありません。
12月には、星の形のクリスマスタルト、ヨウルトルットゥを食べます。パイ生地で作られてプルーンジャムが入ったペストリーです。12月13日は、特にスウェーデンを母語とするフィンランド人がお祝いする聖ルシアの日で、ルシア・キエッレプッラ、またはスウェーデン語で「ルッセカテン」という名前の菓子パンを食べます。
でも、シナモンロールは1年中食べられるものです!

菓子パンとコーヒーを楽しみながら人付き合いをすることはフィンランド社会に深く根付いた伝統です。片手にシナモンロール、もう一つの手にコーヒーを持ちながら、フィンランド人たちは仕事の問題や悩み事を解決し、夏の始まりの暖かい日や子どもの誕生をお祝いしたり、休暇の後に仕事に戻りたくない気持ちを分かち合ったりするのです。シナモンロールは食べ物ですが、楽しみと元気も与えてくれます。コルヴァプースティは善意の菓子パンで、誰かにあげることは親愛の印でもあります。
古き良き時代、フィンランドでは土曜日が「菓子パンの日」で、お母さんやおばあちゃんがプッラやコルヴァプースティを作ってくれる日でした。一番おいしいシナモンロールを作る人のレシピはなかなか教えてもらえないものですが、誰もが、できるだけしっとりしていて、弾力があって、やわらかいシナモンロールを作ろうとしていました。秘訣は、できるだけ小麦粉を少なくして、パン生地を膨らませて2倍の量にすることです。パン生地を丸めて切って、形を整えたら、オーブンに入れる前にさらに膨らませます。
最近は、フィンランドのシナモンロールにも驚くようなバリエーションが出てきました。クリエイティブなパン職人が小さな花冠のようなものを作り出したこともあります。でも、バリエーションをコルヴァプースティと呼べる限界はどこでしょうか・・・
シナモンロールがきつね色に焼けたら、かごに入れて麻のタオルをかけます。ところで、フィンランドでこの菓子パンを「シナモンロール」(フィンランド語でカネリプッラ)と呼ぶ人はいません。あくまでもコルヴァプースティで、簡単に訳すと「耳のプッラ」という意味です。
カフェの店員から、どのコルヴァプースティにするのか聞かれても驚かないように!人によって焼き加減の好みが違うということは、フィンランドでは常識なのです。真ん中がやわらかいプッラしか食べない人もいるくらいです!
一人でカフェに座って食べるのはちょっとという人は、コルヴァプースティだけ買いましょう。焼きたてのシナモンロールの香りに誘われてお店に入ってきた人の気持ちは誰でもわかります!